「ふと思い出す」ことの中に1

ある50代の男性なのですが、ずっと話すことへの苦手意識を持ち、あがり症に悩んでいたのです。私との会話の中で、ふとあることを思い出したのです。それは彼が幼い頃、父親に「お前の話し方は中国人みたいだな」と言われたんですね。
別に中国人の話し方が悪いわけではないのですが、中国の人が日本語を話せば独特の語り調になります。彼は子ども心に「自分の話し方は他の人と違って変な感じなんだ」と意識しだしたのです。これが彼が自分の話し方にコンプレックスを持つ芽となったのです。

私たちは生きていく上で、得意なこと苦手なことにかかわらず、そうなっていく原点があります。それを何となく、あるいははっきりと憶えている場合もありますし、すっかり忘れてしまっている場合もあります。特に嫌な思いや出来事は記憶の深くにしまいこまれることが多いのです。
「ふと思い出す」ことの中には決して忘れ去られることのない、自分の心に影響を与えた言葉や出来事が顔をのぞかせています。ここがとても大切なのです。
自分の人生における重要なキーワードがここにあるのです。「あァーこれだったのか!」と、自分の継続された意識の源がわかれば、次第にそれから解放されていきます。自分をコントロールしている源の正体がわかれば、その正体は力を失っていきますから。
「ふと思い出す」思いや出来事は、決して忘れ去られることのないほどの力を持っています。
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最終更新日:2014/09/18